「ゼルダ!」
お昼休みも中頃、
窓辺で静かに空を眺めていたところへ、
廊下を走って来る1人の人物。
「・・・リンク」
ゼルダは小さくその名を呼び、
そして微笑んだ。
「弁当もう食べた?」
「えぇ」
リンクはゼルダの隣に並んで共に窓の外を眺める。
校内で時たま見かける、幼馴染2人の昼休み。
「なぁ、最近さ・・・」
「?」
「ロイがね、君の話ばっかりするんだよ」
「・・・私の?」
「今まで全然だったのにね。
なにかあったのか?」
「ロイって、あなたのクラス?」
「そうだよ」
「しおりを拾ってもらったの」
「しおりって、いつも持ってるあのしおり?」
「ええ・・・私、落ちたのに気付かなくて。
でも彼が呼び止めてくれたの」
「・・・それで?」
「ただそれだけ」
「なるほど」
「なにが『なるほど』なの?」
「いや、ロイ、一目惚れしちゃったのかもなって」
「・・・」
ゼルダは少し、目線を落とす。
この類いの話はよくされるのだ。
リンクからも、他の生徒からも。
その度に、彼女は困った顔をする。
「ロイってば面白いんだよ」
リンクは気付いているのか、いないのか。
そのまま話を続ける。
「俺がゼルダの昔の話すると、
すっっごいマジメな顔して聞くんだ」
「昔の話?何を話したの?」
「俺とゼルダが、まだ毎朝いっしょに園帽かぶってた頃の話」
「そ・・・そんな前の話を?」
「懐かしいよな」
ゼルダは、横に顔を向ける。
そこにあるリンクの横顔は、真っ直ぐに空を見上げている。
「2人で、手、繋いで歩いてたよね」
その瞳には何が映っているのか。
「・・・リンク」
「ん?」
「あの・・・」
リーンコーン・・・
「ぁ・・・」
「終わっちゃった」
響く予鈴の音に、2人が動き出す。
「ゼルダ、またね!」
「えぇ・・・」
教室へと走り出すリンク。
「ゼルダ」
と、少し離れてから振り向いて
「今度、遊び行こうな、ロイも一緒にさ」
ゼルダが静かにうなずくと
リンクも笑みを返し、また走り出す。
「・・・」
しばし、その背を見送り、
ゼルダも静かな足取りで教室へと急いだ。

next
Back