
通り掛かった、ニューポークシティ。
今日もここの空はひどくどんよりとしていて、
昼なのか夜なのかもよくわからない。
景色の奥には、きらびやかに飾られた巨大な建物のハリボテの群れ。
いったいあんな物に何の意味があるのかわからないが、
それらは当然のようにこの街を形成している。
明らかに、ここを包んでいる闇。
しかしそれはけして黒ではなくて、
非常に曖昧な灰色。
「・・・」
知らない世界を評価するつもりはない。
しかし、
それでもここは好きになれそうにないと感じた。
誰もいなければ、留まる理由を見いだせない場所、
だが
そんな所に座り込む、一人の影。
「リュカ」
声を掛けると、
その子はハッとした様子で振り返った。
「・・・アイク・・・こんにちは・・・」
愛想笑いを浮かべるも、表情から影が消えない。
「どうかしたのか?」
「ううん・・・なんでもないよ」
「・・・そうか」
アイクはそれ以上何も言わなかった。
しばし流れる、沈黙の時間。
「・・・」
「・・・」
「・・・
ここは、リュカの世界だったな」
「うん・・・」
「この街が故郷なのか?」
リュカは小さく頭を振る。
「違う。ぼくがいたのは・・・」
話し出そうとして、
でも声を落とし、やめてしまう。
『・・・』
またも流れる静かな間。
「・・・・・・アイク、相手・・・探してるんでしょ?」
「・・・あぁ」
「ぼくで良ければ、乱闘、するよ?」
言いながら立ち上がろうとするリュカ。
「・・・」
「べつに、元気ないとか、
そういうわけじゃないんだ。ただ、ちょっとだけ・・・」
リュカの言葉が過ぎる中、
アイクはその子の方へと歩み寄り、
少し手前で
ストッ
と、剣を足場に突き立てた。
「ぁ・・・」
「あのデカイのが出て来るくらいまでなら、待とう」
アイクは言いながら、
剣の傍ら、壁に腕を組んでもたれかかる。
リュカのすぐ側、だけど一歩離れた位置。
「・・・ありがと、アイク」
立つのはやめて、
リュカは膝を抱え直す。
二人とも、
気が付けば笑っていた。
ほんの少しだけ。
そこにいてくれる人がいる。
それだけでいいのかも。
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