

「なんだってんだ、ここはッ!」
フォックスの隣でがなる、ファルコ。
まぁ、気持ちはわかる。よくわかる。
「どいつもこいつも『トリ』『トリ』言いやがってっ!」
フォックスもはじめは言われたものだ。
ファルコのようにあからさまに不機嫌になったりはしなかったが、
気分のいいものでもなかった。
彼はつい先ほど、フォックスと合流した。
ピカチュウによって呼び出された、
『ここ』の新しい参戦者。
ありがたいことに、彼は通信機を持っていた。
そのためフォックスがファルコの所在を把握するのは容易だった。
・・・もしかしたら、マスターが持たせたのかもしれない。
ファルコに対する『ここ』についての説明を
ピカチュウに全部任せるのはさすがに無理があると思い、
とりあえず、自分の所へと呼んだ。
説明を交えながら、彼をつれていろいろ巡っていたのだが、
・・・
これまでに会ったのは、
ピカチュウを除けばネス、ピーチ、そしてロイ。
ファルコを見た第一声が
3人とも、同じ物だったわけで。
彼の機嫌が悪くなる要因は他にもいくつかあった。
なかなかアーウィンで飛び回れない、
パイロットの身でありながら、白兵戦をこなさなきゃならない、
手にある銃器はブラスターのみ・・・
・・・そういえば、
彼が地に足をつけているのを見るのは久しぶりだ。
「仕方ないんだよ」
「なにが」
憮然とした態度のファルコに、フォックスが諭す。
「『ここ』にいるメンバーの大半にとって
トリも、キツネも、
本来は歩いて喋る者ではないらしい」
長くいることで自然と身についた、他人の常識。
「・・・意味わかんねぇ」
「慣れるしかないってことだ。俺達も、彼等も」
ファルコの容姿を見て『鳥だ』と呟いてしまうのは、
他の世界の者としてはごく自然のこと。
誰のも、悪気があっての言葉ではない。
「・・・ったく、めんどくせぇ所だ」
ファルコも理屈はわかっているようだ。
だからこそ、理性と感情の格差に苛立ちを覚えるのだろう。
「慣れさえすれば、なかなか面白いところだよ」
「けっ、どうだか」
・・・
気が収まるにはまだ時間がかかりそうだ。
「あ!フォックス!」
そんなところへ
こちらに手を振り、駆けてくる、一人の影。
「リンク、・・・」
フォックスが何か言おうとする前に、
彼の目は、見知らぬ者の姿をしかと捕らえていた。
そして
「鳥だ」
リンクが口にするや否や。
彼のこめかみに、
ブラスターが突き付けられる。
引き金に手をかけているのはもちろんファルコ。
不機嫌の絶頂、彼の顔によく出ている。
「俺が『トリ』 なら、てめぇはなんと呼びゃぁいい?」
リンクは、
答えず、顔色も変えず
「知り合い?」
フォックスの方に尋ねた。
・・・口調こそ落ち着いてはいるが、
フォックスには、リンクの眼に宿る微かな光を見て取ることが出来た。
彼がたまに見せる
好戦的な眼光。
(あぁ〜、これは・・・)
「・・・うちのクルーだよ、見たとおり」
「また一人来たって聞いた」
「あぁ、こいつだ」
「手加減、しといたほうがいい?」
もう、フォックスは止めることも諦めて
「・・・どうなんだ?」
ファルコの方にふる。
返ってきた返事は思ったとおり。
「ふざけんな」
ただ一言。
「終わったらグレートフォックスまで戻って来てくれ」
「いや、すぐに追いつく」
言いながら、
ファルコが引き金を引く。
と、ほぼ同時に
リンクはその身を低く屈めた。
頭上を過ぎるブラスターの光線。
それもまだ消えぬうちにリンクはファルコに足払いを仕掛ける。
ファルコはそれを、地を一蹴、高く跳び上がってかわす。
いったん距離をとったファルコを見据え、
「俺のことは」
リンクは
背中の剣に手をかけ
「妖精さんって呼んでくれればイイよ♪」
軽い口ぶりとは裏腹に、
瞳には鋭い光。
再びブラスターを構える相手に向かって
こちらも地を蹴った。
「意外に・・・似てるのかもな、あの二人」
フォックスはますます激しくなりそうな乱闘の舞台に背を向けた。
寄り道をして
グレートフォックスに帰って来たところ
すでにアーウィンが一機、いなくなっていた。
初対面って意外に大事。
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