「暇だな・・・」
      
      
      特に当てもなく、ぶらぶらと1人徘徊するリンク。
      今なら誰とでも乱闘の相手が出来るのに、
      こういう時に限って、
      誰にも会えなかったりする。
      
      
      「・・・」
      
      
      誰かいないか、何かないか・・・
      何でも良いんだけれど。
      
      
      
      そう思っていると、
      
      微かな光と共に、何かがステージ上に現われた。
      
      
      
      「・・・」
      
      
      出現したのは、
      アシストフィギュアだ。
      
      
      「・・・」
      
      
      取り合いする相手もいないステージ、
      リンクはそれに、特に急ぎもせず歩み寄り、
      そして手に取った。
      
      
      「・・・」
      
      
      眺めるも、使ったところで何の意味もない。
      
      
      「・・・」
      
      
      意味もないが・・・
      
      
      
      
      暇だった。
      
      
      軽く、だが意思を持って、
      それを頭上へ投げ上げた。
      
      
      
      
      
      
      
      パッと辺りを白い閃光が埋める。
      そして・・・
      
      1人の人物が姿を現す。
      
      
      「ヒヒヒッ!
       埋められたいのはどいつだぁ?」
      
      
      現われたのは、ワルイージ。
      
      
      「・・・って誰もいねぇじゃねぇかっ!」
      
      
      自分が呼ばれるには静か過ぎるステージ、
      手に持ったテニスラケットを振り上げ、1人叫ぶ。
      そして、
      くるっとこちらへと向き直った。
      
      
      「呼んだのてめぇか!」
      
      
      聞かれ、リンクは素直にこくりと肯いた。
      
      
      「相手もいねぇのに呼び出すなっ!」
      
      「・・・スイマセン」
      
      「ったくよぉ、
       こっちだってヒマじゃねぇってのに・・・」
      
      
      ボヤキながら、やり場のないラケットを肩に担ぐ。
      
      
      「・・・にしてもホントに誰もいねぇな。お前1人か」
      
      「まぁ・・・」
      
      「淋しいやつだな。
       こんなに天気もいいのによ。ちったぁ体動かせや」
      
      「体?」
      
      「そーだよ、例えばなんか・・・スポーツでもするとか」
      
      「・・・そういえば」
      
      「なんだ?」
      
      「その手に持っているのはなんですか?」
      
      「はぁ?お前、テニスラケット知らねぇのかよ?」
      
      「テニスを知らないんで」
      
      「球技だよ球技。
       こんくらいの大きさの硬いボールを、こいつで打ち返すゲームさ」
      
      「へぇ・・・」
      
      「ホントに知らねぇのか?」
      
      
      訝しげな目で睨まれるも、
      知らない物は知らないので、特に何とも返さなかった。
      
      
      「・・・まぁ、向いてなさそうだもんな、手も足も短いし」
      
      「スイマセン」
      
      
      さりげなく馬鹿にされたが、あんまり気にせずそれだけ言っておく。
      アシストフィギュアに喧嘩を売るのはそれこそ馬鹿げているし、
      確かに彼と比べりゃ手足は短い。
      なにより、腹を立てるような気分でもなかった。
      
      
      「・・・でもそれ、面白いんですか?」
      
      「おぅ。
       ただ球返せばいいんじゃない。
       相手がどういう動きすんのかを読んで、
       どこにボールを落としたら打ち返しにくいか考えるのさ。
       この、人の裏をかく感じがイイんだ」
      
      
      本当に楽しそうに、彼は語った。
      
      
      「へぇ・・・」
      
      「今度やってみろよ」
      
      「場所ないです」
      
      「コートくらい、姫にでも言って作らせろよ。
      
       ・・・おっと、時間だ。
       じゃな、今度はちゃんと乱闘中に呼び出せな」
      
      「あ、はい」
      
      
      
      
      
      間もなく、ワルイージの姿が消える。
      もとどおり、
      ステージにはリンク1人きり。
      
      
      
      
      「・・・
       ・・・・・・面白いかも」
      
      
      リンクは、徘徊を再開する。
      今度はアシストフィギュアを探しながら。
      
      
      
      
      
      
      
      
      
      
      
      
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