
「・・・つまんねぇ」
ダークリンクがぼやく。
ハイラルの神殿にて。
他の者は立ち入ってこない、二人っきりの空間で
リンクとダークリンクは肩を並べ、座っていた。
お互い、決して剣から手を離すことはない。
「なにが?」
「・・・お前にわかるもんか」
自分に向けられる視線を見返そうともせず、
けだるそうに背を丸める。
「まぁ、
俺の相手だけじゃ、飽きるよな」
彼のそんなそっけない態度も慣れたもので、
リンクは気にもしない。
「たまには神殿から足のばしてみたらいいんじゃないか?」
軽い口調で提案する。
だがダークリンクはその言葉を睨むような視線で返す。
「できないのわかってて言ってんのか?」
「え?」
ほんの少し、リンクが驚きの情を見せた。
自分と同じ顔が
いつものようなキツい目つきで、
いつになく真剣な視線をよこしている。
「オレは、ここにいるべき者だ」
「縛られるだなんて珍しいじゃないか」
「・・・」
定められた、彼の居場所。
そこから出る理由も、出てもいい理由も、彼にはない。
「聞いてみたらいいじゃん」
「聞けるかッ!」
「どうして?マスター、別に怒らないよ」
「・・・」
「なんだ、もしかして怖いのか?」
反論は、なかった。
「・・・怖くないほうが、オカシイ」
マスターハンド。
『ここ』の全てを統べるもの。
あの存在の前では、全ての力が無意味となる。
絶対的な力を持つ者。
それの定めた理に、あがらおうだなんて・・・
「だいじょぶだよ」
落ちた視線を再び上げる。
そいつは、笑っていた。
立ち上がり、背中の鞘へ剣を収め
「行こう」
ダークリンクを誘う。
「・・・」
冗談を言う性格でないのは良く知っている。
影である自分が、誰よりも。
・・・それなのに
なぜこんなにも、コイツに驚かされなきゃならない?
「・・・」
恐れが消えたわけではない。
だが、
立ち上がって、一歩踏み出すくらいは
いいような気がした。
力に弱いダークさん。
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