05せのび 〜06サボタージュの小径
「・・・はぁ」
「負けたより全然マシじゃん。
人の言う事なんて気にするなって、な」
またまた、
リンクの横で溜め息をつくロイ。
相変わらず笑って励ますリンク。
2人そろって、
話をしながら何処へともなく歩いている。
「いーじゃないか、認めてもらったんだからさ」
「そうかもしれないけど・・・
なんか違う気が」
「それに、あいつ喜んでたよ。
『ロイ兄が本気で相手してくれた』って」
「それは、よかったけど」
このあいだの、子供リンクとの一騎打ち、
そんなつもりはなかったのに、
無意識のうちの苛立ちにかまけ、ついつい、むきになってしまった。
頭に残る、乱闘後のあの子の言葉。
『やっぱ強いね、ロイ兄ちゃん』
勝負に勝ったはずなのに、
自分の弱さが浮き彫りになって見えた。
もちろん、
彼がその言葉に乗せた意味がただの素直な気持ちであることは、
わかっているのだが。
「あいつ、今度はなに聞きに来るかな?
こないだはブーメラン持って来たんだ」
ふと、隣を歩くリンクを見上げる。
(リンクって、先輩の、先輩になるんだよな)
あまりそうは見えないけれど。
前に彼は言っていた。
『俺だって、マルスに負けるよ』
むしろ負けているところをよく見る。
だけど、ロイにはけっして、
リンクがマルスより弱いようには見えなかった。
絶対的な強さじゃなくて、
もっと、
違う何かをもっているような。
なんだろうか?
なんでも使いこなす器用さか?
どんな状況も受け入れる柔軟さか?
はたまた、剣とともに背負った勇者の名か?
「どうかした?」
リンクが聞いて来る。
「いや、なんでもない」
少し、自分より背も高い。
こうして並んでいると、あまりわからないけれど、
傍から見れば、その差は、よく見えるに違いない。
(せのびしたら、届くかな)
だが背が届いたところで、なにも変わらない。
(あ)
ふと、思いついた。
(先輩が、せのび、してるのかもしれない)
しかし、
自分では、やはりせのびをしても届かない気がする。
自分の弱さ。
思い出して、小さく溜め息をついた。
「だいぶ悩んでるみたいだな」
「なんかいろいろ考えちゃって、
もう、よくわかんないよ」
頭の中を駆け巡る、様々な思考、そして感情。
「なんだか、道に迷ったみたいだ」
果て無き道の上、次の一歩すら見失っている。
そんな感じがしてしまう。
「迷うのはしょうがないさ」
リンクの口から発される、
思いもかけぬ言葉。
「どうして?」
ロイが問う。
「迷いは弱さ、そうじゃない?」
「俺はいつも迷ってるよ」
リンクが答える。
「道は、絶対に一本道じゃない。
地図が無ければ迷う他ないだろ?」
ロイに笑いかけて、リンクはふと空を見た。
「どこへ行くにでもいろんな道があるんだ。
城に行く道もそう、
湖に行くのもそう、
剣の道も、強くなる道も、生きる道も、
全部同じだよ」
ロイへ語りながら、
その目は、まっすぐに前を見ている。
「行きたいほうに行けばいいのさ。
たまには寄り道もしたらいいんじゃない?」
「寄り道・・・」
息抜きも必要。
よく言われるけれど、
それはただの『サボり』じゃない。
そこにも何か、得られるものがあるかもしれない。
「たまには・・・いいかな」
まっすぐ進んでいかなくてもいい。
とにかく目差して歩いて行く。ただ、それだけ。
・・・しかし
ふと思っても見る。
「『ココ』にいること自体、大きな寄り道な気もする」
「・・・あぁ、そうかもね」

next
Back