04反抗期武勇伝
「ロイ、修行してるらしいじゃん」
「え?」
ひとり、やることを求めてさすらうロイに、
ヒマそうな子供リンクの声がかかる。
「リンク兄ちゃん言ってたよ」
まっすぐロイの目をみつめる、その青い瞳に、
なにやら妙な期待がこもっている。
「なぁなぁ、修行って、どんなことさせられてんの?
マルスが師匠なんだろ?
あんなことや、こーんなこと、やらされてるの?」
「あんなことって・・・」
どうやら若干、『修行』という言葉の響きにだまされているようだ。
「大したことはやってないよ、まだ」
「そうなの?じゃー何やってるんだ?」
「・・・素振りとか
・・・・・・たまに、サンドバッグ君の相手」
「えーそれだけ?つまんない」
「だから大したことやってないって」
「それだけで、強くなれるの?」
リンクに問われ、
ロイは少し、悩む。
・・・物足りない。
そんな思いは、どうしても付き纏っていた。
基礎中の基礎が、何よりも大切なのはわかっている。
それでも、やはり思ってしまう。
なにか、物足りない。
ふと、気付くと、
リンクがにやけた顔でこちらを見つめていた。
「ロイ、ちょっと不満なんだ?」
「そんなことないよ」
「ほんとはもっとハデなことしたいんじゃないの?」
「先輩についてくって決めたんだ。最後までついてくよ」
「・・・最後って、どこ?」
「・・・」
大人の方も子供の方も、
リンクはときたまこういう、物事の芯をつつくような物言いをする。
またも返答に困るロイ。
そういえば、マルスに勝ちたいというのが動機だった。
「先輩に勝てるようになる事かな?」
「マルスに勝つのに、マルスに教わってちゃだめじゃん?」
リンクの言うとおりな気もする。
「でも始めちゃったし、やるだけやるしかないよ」
どちらかといえば自分自身に言い聞かせるために、言葉にする。
「ふーん」
そんな真面目なロイの姿は、
子供のリンクにしてみれば、あんまり面白くないらしい。
「ロイ、俺の相手してよ」
「え、でも今は僕、修行中・・・」
「いーじゃん、修行の一貫ってやつでさ!
それに子供に負けるようじゃ、マルスになんか勝てないよ?」
「負ける気は・・・ないけど」
「でもロイ、俺に勝ったことないだろ?」
「まぁ、そうだね」
子供リンク相手に
まともな一騎打ち自体、した記憶がない。
「もし、今日、俺に勝てたら、『兄ちゃん』って呼んでやるよ」
・・・引く気は全くなさそうだ。
(まぁ、乱闘禁止とは言われてないよな)
「しょうがないなぁ・・・」
「やる気出してよ?俺はおーまじめだからね」
「そうだな、僕も真面目にやらないと、失礼だね」
「そういうこと!」
ロイの返事を、乱闘オッケーととり、
リンクはいきいきと、
背に手をやり、盾とブーメランを構えてみせる。
(負けらんない・・・よな)
今は修行中。
ただただ、強くなることに集中しよう、いつなんどきも。
ロイは剣を抜き、
リンクを正面に見据え、半身に構えた。
この後すぐに、
ロイが、
子供リンク相手に真剣勝負をして、
『お兄ちゃん』の称号を勝ち取った
・・・なんて噂が現れることとなる。

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