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「ブリンスタというのは、 惑星ゼーベスの一部のエリアを呼ぶらしいよ」 以前サムスから聞いた知識。 マルスは、じっとステージの下を眺め続けるアイクに言った。 「下に広がっているのは溶岩ではなくて酸の海なんだ」 「サンの海?」 聞き慣れぬ言葉にアイクが顔を上げ、マルスを向く。 「サムスが言うには、とりあえず『触るな』と」 「・・・わかりやすい説明だな」 言いながらアイクは再び足下に広がる『海』に視線をやった。 それは、いつも自分の上に広がる空と同じように、 当然のように目下に広がっている。 今はこちらへ迫ってくる様子もない。 「・・・?」 マルスはふと頭をかすめる記憶に気付く。 「どうかしたか?」 「いや・・・ 前にも同じ話をしたな、と」 「サンの海?」 「サムスが言うには、とりあえず『触るな』って」 「じゃあ結局、溶岩と変わりませんね」 「危険と言う意味ではね」 マルスはやんわりと否定をしてみる。 だが 対するロイはそれに気付く様子もなく、 へぇー、と感嘆の声を小さく上げ、 ステージの隅から下の海を眺め続けている。 (ま、いいか) 自分もまだよく解っていないんだし。 マルスはそれ以上考えることを止めた。 「サムスさんはこんなところで闘っているんですか」 「そうだね」 「・・・想像もつかない」 「僕もだよ」 呟かれた言葉をマルスが拾う。 「こんなにも近くで見ているのにね。場所も、彼女自身も」 「やっぱり、世界が違いすぎるんでしょうか」 「まぁ・・・ 比較的似ていそうなリンク達の世界だってよく分からないんだ、 当然なのかもしれない」 「でも、そう諦めるには・・・」 「近くに見えすぎる?」 「だって、実際に立っているんですよ?今、ここに」 「でも僕らはこの世界の住人じゃない」 「・・・そっか」 少し、声を落とすロイ。 「・・・ ねぇ、ロイ」 マルスが再び言葉を口にすると、 ロイはパッと顔を上げた。 「もし、本当に、こんなところで一人置かれたらどうする?」 「え・・・」 「僕らの世界にここのような場所がないとは言い切れないよ」 「・・・」 『そんなわけない』 ロイは言いかけて、止めた。 改めて 真剣な眼差しで辺りを見回す。 「・・・ 過酷な環境ですけど、 人工物があるということは、人が生活をしている可能性があるということ。 ならば、必ず他の場所への道もあります」 「それを探す?」 「はい」 うなずいて、さらに見渡し、 「今立っているこの足場だって、 明らかに人の手が入ってるんだし・・・」 言葉を続ける。 「・・・ん?人以外の場合もあるのかな。 でも、ここだけに留まって生活している可能性は・・・」 「ロイ」 「はい?」 急に言葉を遮られ、 ロイはきょとんとした顔で振り向いた。 「それって、君の答え?」 「え?どうしてですか?」 「僕と同じだなって」 「・・・」 言われて、 ロイはしばし黙し、マルスを見つめる。 真っ直ぐマルスの目を射抜く、ロイの視線。 「僕は」 ロイは、そっと、 自分でも気付かぬほど僅かにためらいながら、 続けた。 「先輩ならこう言うだろうなって」 「どうして?」 「だって 僕は、先輩の・・・」 答えるその顔は、 ただただ真っ直ぐにこちらを見ている。 向けられる、 マルスのそれとは似て異なる青い瞳。 ・・・だが 「先輩の・・・後輩だから?あれ?」 その色がころっと変わる。 続くべき言葉が見つからなかったらしい。 いや、失くしたというべきか。慌ててそれを探し始めるロイ。 そんな様子の彼に、マルスは思わず笑みをこぼした。 「なんて言うんでしょうか?こういうの・・・ ・・・って、え?先輩?」 急に頭に手を置かれ、 ロイが疑問を口にしながら肩をすくめる。 「真似なんてしなくていいのに」 微笑むマルスに ロイも「すいません」と言いながら顔をほころばせた。 マルスが手を下ろし、 ロイは上目がちにマルスを見やる。 「本当にここに置かれたら、 とにかく上へと上ると思います」 先程の慎重な答えとは裏腹に ロイは軽く、付け足すような感じで答えを口にする。 「後先は、考えないかも」 悪戯っぽい口調ながら、 彼の瞳は真面目そのものだった。 「よくないですよね」 「そうだね」 ふと思い出して、 「アイク」 ふと口にしてみる。 呼ばれて、アイクは目だけで『なんだ?』と聞き返してくる。 「もしも、本当に、ここに一人置かれたら・・・ 君ならどうする?」 「・・・」 アイクは無言で、視線だけを少し泳がせた。 しばし思案し、 「俺なら」 重い口を開き、 「上を目指す」 きっぱり言い切った。 ほんの少しだけ、驚きの情を見せるマルス。 だがそれも一瞬のことで、 すぐに隠してアイクを見やった。 アイクは、 上に果てなく広がる暗闇を、真っ直ぐにその瞳で見据えている。 「・・・と言いたいが、 とりあえず人工物を探すというのが定石だろうな」 言いながら、 すっと目を落として、アイクはマルスに視線を投げる。 その目の色に、 マルスは 「面白いね、君も」 微かな笑みをこぼした。
No.50『モデル変え』 自ずと『オリジナル』の背中を追いながら、自身の歩幅で歩いていく。 Xに出てないロイだけど、DXでそんな感じに在り続けてる・・・ ・・・といいなぁと思います。
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