ヒトに乗っかるのは楽しい。
    なぜかはよくわからないけれど。
    前にフォックスが言ってた。
    アーウィンに乗るのはそれだけで楽しいものだって。
    それとおんなじなのかもしれない。
    
    そういえば・・・
    『ウルフェン』に乗りたい・・・とも言ってた。
    おんなじ飛行機に見えるから、何が違うのかがわからない。
    でもフォックスは興味があるみたい。
    どうしてだろう・・・
    ・・・
    
    
    
    
    
    
    
    「ピカチュウ?」
    
    ふと動きを止めたピカチュウに、
    リンクが声をかける。
    ピカチュウは、
    リンクの肩の上で、じっと遠くを眺めている。
    ・・・なにか考え事でもしているのだろうか?
    
    「どうかした?」
    
    なにげなく、その耳へと手をやろうとした。
    
    ・・・のだが
    
    ピカチュウは
    さっと地面へ飛び降りる。
    そして、そのまま、どこかへ駆けていってしまった。
    
    
    
    
    
    
    
    
    
    
    
    
    
    
    
    「・・・」
    
    静かに、呻くマルス。
    
    「さすがに・・・重いよ」
    「ピカ?」
    
    その言葉にピカチュウは首をかしげる。
    
    「誰だって体調の悪い日はあるよ。
     ね〜、ピカチュウ」
    
    ピカチュウへと能天気に笑うカービィ。
    対照的に、マルスは疲れた顔を見せる。
    
    「・・・そうじゃ、なくて」
    
    両肩にかかる重み。
    それを思うと、立つ気も失せた。
    
    
    
    マルスは
    カービィ、そしてピカチュウ
    それぞれを左右の肩に乗せている。
    乗られている。
    
    
    
    「マルスは健全な男の子だもん、へーきへーき!」
    
    誰のせいだ。
    頭の片隅を言葉が過ぎるが、
    この2人相手に口にしようとは思わなかった。
    べつに
    いやなわけではないのだ。
    慕ってくれるのはいいし、邪魔だなんて思いもしない。
    しかしながらこの2人
    見かけよらず・・・
    
    
    
    ・・・・・・重い。
    
    
    
    片方ならまだしも
    両肩に乗られると、やっぱりちょっと、重い。
    
    「・・・チュ?」
    
    ふと、ピカチュウの視線に気付く。
    こちらの顔色を伺うように、肩の上からマルスを見上げている。
    目が合って、
    マルスは笑みを返す。
    
    「・・・」
    
    少しの間。
    と、
    ピカチュウは、
    スッと軽い身ごなしで
    マルスの肩から降りてしまった。
    
    「あ・・・」
    
    地に立って、マルスに向き直り、
    
    「ピーカ」
    
    頭を下げて、
    そして背を向け、駆け去っていく。
    ・・・
    ポケモンって
    ほんとによく人の気持ちを読む生き物だなぁ・・・
    なんて、思ってしまう。
    
    「・・・」
    「あぁ〜ぁ、マルスがイジメた〜」
    
    誰のせいだ。
    今度ばっかりは言えなかった。
    
    
    
    
    
    
    
    
    
    
    
    
    
    
    
    「なんか変わったことないの?」
    「ありませんね」
    「・・・つまらないわ」
    「平和が一番です。お茶も美味しいですわ」
    「今日はまた違った葉っぱを入れてみたのよ」
    「香りが強いですね」
    「でも味はすっきりしてるでしょ」
    「えぇ、とても」
    
    いつもとなんら変わらぬ、ピーチ姫の居城の一室にて。
    穏やかな午後のティータイムを嗜む姫2人。
    そこに、
    コンコンと小さいノックの音。
    
    「はーい」
    
    ピーチが返事をし、席を立つ。
    扉が開く気配はない。
    
    「誰かしら?」
    
    そっと部屋の扉を開くと、
    そこには
    
    「ピカチュ」
    「あら、ピカチュウ。
     いらっしゃい」
    
    部屋の前に立ったピカチュウは、
    不思議そうな表情で、部屋の中を眺めている。
    
    「どうかしたの?」
    
    ピーチが尋ねると、
    ピカチュウはなにかを言いながら
    部屋の奥、2つのティーカップが並ぶテーブルを指差した。
    
    「?」
    「お茶の香りが、気になるのではないですか?」
    
    ゼルダが添えると、
    ピカチュウは首を縦に振った。
    
    「あら、あなたも飲む?」
    「ピカッ!」
    「ふふ、じゃ、入ってちょっと待ってね」
    
    ピカチュウを招き入れ、
    自分はお茶をいれに行く。
    部屋へと入ったピカチュウはテーブルへと歩み寄る。
    
    「こんにちは、ピカチュウ」
    
    ゼルダが笑いかける。
    卓上へと跳び乗り、ピカチュウはゼルダの顔を見上げた。
    姫の穏やかな瞳にその姿が映る。
    しばし見つめあう二人。
    カチャカチャと、ピーチがカップの用意をする音が響く。
    ・・・
    ピカチュウは、
    まじまじとゼルダの顔を眺めている。
    
    
    (この子は、なにを考えているのかしら?)
    
    
    
    「ピカチュウ、ほっぺが赤いわよ」
    
    ピーチがお茶の入ったカップを持って来る。
    
    「もともと赤いですわ」
    「それもそうね」
    
    どうぞ、と
    ピカチュウの前にカップが置かれた。
    
    ちょうどその時
    またもノックの音が響く。
    
    「はーい?」
    
    ピーチが返事をすると、
    今度は扉が自ら開いた。
    
    「あら」
    
    部屋に入ってきたのは
    いかついスーツを身に纏ったサムス。
    サムスは姫たちの前でその頭部を脱いだ。
    現われ揺れる、金のポニーテール。
    
    「珍しいじゃない」
    「・・・変わった香りがしたものだから」
    「貴方も?」
    「?」
    「今、ピカチュウも、ね」
    「ピカチュウ・・・」
    
    テーブルの上から、じっと自分を眺めているピカチュウ。
    
    「そういえば」
    
    ふと、何かを思い出す。
    
    「ピカチュウ」
    「チュ?」
    「ピチューが機嫌を損ねてわめいているらしい」
    「・・・ピィカ〜!」
    「私も、聞いた話でしかないのだけれど」
    「ピカッ!」
    
    サムスの言葉を聞くや否や
    颯爽とテーブルを蹴り、部屋の外へと飛び出す。
    
    そしてすぐにいったん戻ってきて
    
    「ピィカ、ピカピカチュ、ピカピカ・・・」
    「・・・よくわからないけど、いってらっしゃい、ピカチュウ」
    「ピカチュ〜!」
    
    部屋の中の3人に、丁寧にお辞儀をし、
    もとのように城の廊下を走っていく。
    
    「素直でかわいいわね〜」
    (・・・どうだろう)
    
    ピーチの言葉に、サムスは易く同意はしなかった。
    
    「サムス、すぐお茶をいれるわ」
    「いや、私は、それでいい」
    
    サムスはピカチュウが残していったカップを指し示す。
    まだ、湯気も香りも衰えていない。
    
    「だめよ」
    「もったいない」
    「それは私がもらうわ。
     ゼルダも、おかわりいかが?」
    「ありがとう、頂きます」
    
    
    
    
    
    
    
    
    
    
    
    
    
    
    
    ネスが聞いた、ひとつの音。
    小さくて、軽やかで、少し慌ただしい、心音の響き。
    
    「ピカチュウ?」
    
    その持ち主の名をつぶやくと、
    ちょうどそれは、ネスの視界に現れた。
    
    「・・・ピカ!」
    
    ピカチュウも、ネスの姿に気付き、
    こちらへと駆け寄ってくる。
    
    「忙しそうだね。どうかしたの?」
    「ピカ・・・ピカチュ、ピチューピカピカ」
    「・・・ピチュー?」
    
    ネスがつぶやくと、ピカチュウは大きく頷く。
    
    「ピチューなら・・・」
    
    と、ネスは視線を横へ投げた。
    
    
    
    「ワタシはここだ、ネス」
    
    
    
    現れる、ミュウツー。
    その横には
    ふわりと宙に浮いたピチューの姿があった。
    ピチュー自身は眼を閉じうなだれたたまま、音を立てようともしない。
    ・・・どうやら眠っているようだ。
    
    「ピチュッ・・・」
    「・・・ピカチュウか」
    
    静かで、見下すような視線が注がれる。
    僅かながら警戒心を見せるピカチュウに対し、
    ミュウツーはいつもと変わらぬ冷たい態度、組んだ腕を解きもしない。
    
    「・・・」
    「心配するな。何もしてなどない」
    
    (・・・素直に言えばいいのに)
    
    こっそり、ネスが思う。
    しかし余計なことを言うのはやめた。
    ミュウツーが、
    ピチューが疲れて寝入るまで遊びに付き合ってやっていた、だなんて。
    きっと言ったら怒るだろう。
    
    「オマエはこれを放って何をしていた?」
    「ピ、ピカチュピカ、ピッカチュ!」
    「保護者になった覚えはないだと?
     だったら無駄な心配などしなければいいではないか」
    「チュー」
    
    不満そうな声をあげるも、
    ミュウツーは取り合わない。
    
    (・・・)
    
    ネスも何も言おうとはしなかった。
    
    
    
    「あ!ピチュー!」
    
    
    そんなところへ、
    次はロイが現われた。
    
    「ロイ、どうしたの?」
    「・・・・・・え・・・」
    
    なぜか口ごもるロイ。
    だが皆の視線をすでに集めてしまっている。
    
    「いや、べつにどうもしないんだけど・・・」
    
    ネス、ピカチュウ、ミュウツー、
    そして静かな寝息を立てているピチュー。
    
    「いやその・・・
     ルイージさんから、『ピチューが泣いてるよ』って・・・」
    
    ピチューの様子を見れば、
    自分のその言がすでに意味を失ってることがわかる。
    
    「・・・物好きが多いな」
    
    ため息とともに吐き出して、
    
    「で、ピカチュウ」
    
    ミュウツーは視線を再びピカチュウへと下ろす。
    ・・・現われたロイを、意味ありげに見上げているピカチュウ。
    
    「何を考えている?」
    「!」
    
    虚をつかれ、
    ピカチュウは慌てて手と首を振って見せた。
    
    「?」
    「まぁ、いい」
    
    ふわりと、
    ピチューの体が宙を舞う。
    そしてロイの目の前にきて、
    思わず差し出した腕の中へ、すとんと、納まった。
    
    「ワタシなら」
    
    ピチューを繰っていた指先を下ろしながら
    
    「自分より弱い者に身を預けようとは思わないがな」
    「ピカ?」
    
    ピカチュウの疑問も余所に、ミュウツーは皆に背を向けて
    一瞬でその空間から姿を消してしまった。
    
    「あ、ミュウツー!」
    
    ネスが声をあげる。
    
    「まだサイコキネシス教えてくれてないよっ!」
    
    ごめん、またね、と
    ロイとピカチュウに挨拶をし、
    ネスも地を駈け、スッとどこかへ消えてしまった。
    残されたロイはピチューを抱いたまま立ち尽くす。
    
    
    
    「・・・なんなんだろ?」
    
    
    ふと目をやれば、
    ピカチュウは、じっとロイのほうを見上げていた。
    
    「・・・
     ピチューなら、心配ないよ?」
    「ピカチュ」
    
    ロイの問いかけに、ただ小さくうなずくのみ。
    
    ・・・
    
    ピチューは軽かった。
    小さくて、まだまだ幼い、なのに、けして弱くはない。
    ピカチュウもそうだ。
    一緒に並ぶとこんなにも小さいのに、
    ピカチュウは、自分などよりもずーっと強くて。
    ポケモンは、
    ロイの知る普通の動物とはまったくちがう生き物に見えた。
    言葉を話さぬ生き物でありながら、
    こんなにも確かな意思を持ち、人間となんら変わらぬ心を持っている。
    
    
    
    (・・・どんな話をするのかな、ピカチュウって)
    
    
    
    「なーにボケッとつっ立っておるのだ!」
    「えッ!」
    
    急に声を掛けられて、反射的に背筋を伸ばす。
    
    「あ、えぇっと・・・」
    
    ロイがそろりと振り向けば、
    いつの間にやら現われた、クッパ。そしてガノンドロフ。
    
    「なにかあるのか?こんなところに」
    「い、いや、そういうわけじゃないんですけど」
    「なんだ、ただヒマをしているだけか!」
    「ま・・・まぁ」
    
    この人はいつでもどこでもこの調子だ。
    あまり会わないからか、
    この『大魔王』には未だに慣れることができない。
    ・・・さらに慣れない、もう1人の『魔王』。
    彼のほうも、
    相変わらず不機嫌そうな表情をしている。
    
    「えと、お二人は・・・何を?」
    「何もありゃしないわ。ただ相手を探しているだけだ」
    
    なるほど。
    どうやら2人は乱闘相手を見繕っているらしい。
    というか、
    クッパが探していて、ガノンドロフはその一人目、といったところか。
    
    「あと2人ってことですか」
    「そのとーりだ。
     ロイ、お前も入ってもいいぞ」
    
    魔王二人の相手。
    ロイにとって、不安ながらも魅力的なカードではあったが
    
    「すいません」
    
    考える間もおかず、断った。
    
    「ピチュー、預かっちゃったんで」
    「そうか。ならばしょうがないな」
    
    意外にあっさりしたものだ。
    
    「ピカチュウはどうだ?」
    「ピィカ、ピカピカッチュ」
    
    ピカチュウも首を縦には振らない。
    
    「なに、お前も用事があるのか」
    「ピカッ」
    「つまらん」
    「また、次の機会にお願いしますね」
    「次ィ〜?そんなもの、いつあるかわからんではないかッ!」
    
    ・・・いくらでもありそうだが、
    この人に、道理が通るとも思えない。
    
    「よく考えれば、
     ピチューなぞピカチュウに渡してしまえばよいではないか!」
    「え・・・と・・・」
    「せっかくワガハイが
     自ら、戦の『ゴクイ』とやらを教えてやろうと言うのに」
    
    いったい何を教えてもらえると言うのか。
    しかしロイは、しばし黙し・・・
    ・・・クッパの背後、
    我関せずといった顔で佇むガノンドロフに目を向ける。
    
    「僕、どちらかといえば
     ガノンドロフさんにいろいろ教えていただきたいんですけど」
    
    その言葉に、
    ガノンドロフが、ロイを見やった。
    
    「剣を使えるとうかがいました」
    「・・・アイツか」
    「はい」
    「また余計なことを」
    
    別段、感情を示すこともなく、
    ただ目をそらす。
    
    「貴方がどんな剣を振るうのか、見てみたいです」
    「・・・」
    
    ガノンドロフは、応えない。
    
    「そんなもの、べつにこやつに聞くまでもないではないか!」
    
    口を挟むクッパ。
    
    「剣なんぞワガハイにも振り回せるぞ!
     そんなことよりも聞くべきことがあるであろう!」
    「いやぁ、でも」
    「でもなんだ?」
    「僕、クッパさん見たいな爪とか牙とか持ってないですし」
    「なぁ〜にを言うかぁーーーッ!」
    
    思わず耳をふさぐロイ。
    
    「己の身体使ってなんぼだろうが〜〜ッ!
     これだから最近のワカいヤツらは・・・」
    「ピィカチュ〜」
    
    ロイの横で、ピカチュウがこくこくとうなずいている。
    
    「お?ピカチュウもそう思うか?」
    「ピッカチュ!」
    「わかっておるな!」
    
    大きな口で満足げに笑いあげるクッパ。
    ロイも、お愛想でとりあえず笑っておく。
    
    「ん?」
    
    クッパが再びピカチュウに目を落とす。
    ピカチュウは、そのまるい瞳でじっとクッパを見上げていた。
    
    「どうかしたか?」
    「ピィカ・・・」
    
    ピカチュウは意を決し、
    身振り手振りを交えて話し出す。
    
    「ピカチュピカピ、ピィカチュピッカチュ」
    「なに?肩がこっただと?」
    
    クッパの言葉に、
    ピカチュウはガクリと肩と頭を落とす。
    不思議そうな顔のロイの腕の中で、
    ピチューが小さく寝返りをうった。
    
    
    
    
    
    
    
    
    
    
    
    
    
    
    
    「ピィカァチュ・・・」
    「あ、ピカチュウ」
    「!ピッカ!」
    
    1人になったピカチュウのところへ、
    通りがかって声をかけるリンク。
    
    「どうしたの?疲れた顔しちゃって・・・」
    
    言いながら、
    いつものように自分の肩の上へと上ってくるピカチュウに手をやった。
    
    「ピカ」
    「なに?相手してくれるの?」
    「ピィカ〜」
    
    首を振り、
    疲れた様子でリンクにもたれかかるピカチュウ。
    
    「・・・おつかれさま」
    
    軽くかかる、労いの言葉。
    いつものように
    リンクの手がピカチュウをやさしくなでた。
    
    
    
    
    
    
    
    
    

    結局、同じところに落ち着くっていう。     
    1000HITのリクエスト、     
    これでほんとによいのか?     
    とにかく、ありがとうございました〜(ペコリ)     



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